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2018.07.27

省庁向けモデリングライブの効果

 7月23日に超高速開発コミュニティのメンバーが霞が関に集まり、モデリング/実装ライブを開催した。省庁向けの不定期イベントで、4回目となる今回は内閣府向けである。

 国会議事堂や首相官邸を臨む内閣府庁舎での作業も面白かったが、今回は他の意味でとくに楽しめた。これまでは各チームに設計と実装をまかせていたため、システム要件の中から、各ツールにとって扱いやすく、かつ印象的なデモをやれる要素だけが恣意的に選ばれてしまうきらいがあった。そこで、私が代表してデータモデルをまとめ、これを共通のスコープとして各チームで実装するスタイルにした。結果的に「同一課題に対する実装結果の違い」を如実に示す形になった。このほうが緊張感があって断然面白い。

 いつものように、どんな案件かは事前には知らされない。会場に入ってから資料を何枚か渡されはするが、それらの説明もあえて受けずに、担当者に直接ヒアリングしながら30分でデータモデルをまとめ、それなりに動くシステムを60分で実装した。見学者は20名ほどだったのだが、毎度のことながらこの圧倒的なスピード感は大きな衝撃だったようだ。

 とくに現行のUIを参考にしないで、対話だけを通じてDB構造が出来上がってゆく様子は驚かれる。多くの技術者は、UIの手がかりがないとDB設計はできないと信じ込んでいる。私に言わせればそれは訓練の仕方が間違っているか、必要な適性が欠けているかのどちらかである。

 たいていは、膨大な資料にもとづく調査・分析作業が延々と続く。膨大な人数が手間ひまかけて出来上がるのは、現行の帳票やエクセルシートの様式をなぞっただけのUIデザインを含むExcel方眼紙の山だ。緻密な内容のわりに、その段階でもDB構造はまともに構想されていない。最終的に出来上がるシステムは、使いにくいうえにDB構造がグダグダの代物で、見通しが悪いので開発ベンダーにしか保守できない。

 そんな経験をしてきた調達関係者の目の前で、「的確にDB設計すればシステム開発は少数精鋭で賄えるし、プログラミングが不要なツールを使うことでユーザ自身で保守できる」という事実が淡々と示される。ようするに「設計は専門家の仕事だが、実装は簡単」なのである。イベントの効果はすでに現れていて、ベンダーの設計能力を見極める形で調達スタイルが見直されつつある。すなわち、概要にもとづいてその場で設計・実装出来るかどうかの実技審査(オーディション)だ。じっさい最近、まともに設計できないことがバレて信頼を失った大手ベンダーがいたらしい。

 わかりにくいシステムを納品して、自分たちだけが保守できる経営資源とする――そういった旧弊はこれからは通用しなくなる。業務システム開発に対する合理化要求は、案外と政府調達から始まるのかもしれない。いずれにせよ、顧客を食い物にするようなビジネスは遅かれ早かれ淘汰される。省庁もユーザ企業も、ベンダーが考えるほど愚かではない。勉強会を重ねてデータモデルを読めるようになった彼らから「概要を説明するので、モデリングして実装してください。2時間でお願いします」と依頼されて、あなたやあなたの会社は応えられるだろうか。

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