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2018.04.11

DB設計がマトモであれば何とかなる

 3月にJUASで開催された「データモデリング&超高速開発ライブ」の動画が公開された(これ)。4分程度のダイジェスト版であるが、当日の雰囲気がよくわかる。私にとって興味深いのはデータモデリングで、描き拡げられる過程がコマ落としで示される様子が面白い。

 このときは、私がやったことがないという理由もあって「配員管理システム」を開発課題にした。提案してくださった方の口頭説明にもとづいて、参加者からの意見を取り入れつつ11個のテーブルを含むデータモデルとして40分でまとめ、各チームが60分で実装した。実装だけでなく、それに先行する設計もまた「超高速」である。

 これほどの俊敏さで業務システムが出来上がるのは驚くべきことなのだが、このイベントは開発ツールの生産性を示すだけのものではない。当たり前の話だが、データモデルが不細工ならば不細工なシステムしか生み出されない。ツールが発展・普及する過程で実装作業はどんどん楽になるが、複雑な課題を解決するためのDB構造を創案することは相変わらず難しい。言い換えれば、DB設計さえマトモであれば、その上で動作するアプリを作ることはズッコけるほど簡単――ITの発展がもたらしたその現実を生々しく感じてもらうためのイベントなのである。

 だからこそ、業務システム開発に携わる技術者の能力や時間は「アプリの実装スキル」だけではなく「DBの設計スキル」の習得にも注がれるべきだ。素早くかつ的確にDB設計できるようになれば、あとは何とかなる。アプリについては、そのときそのときで使えそうなツールをさっと学んでさっと実装すればよい。何かの理由でその基盤が使えなくなったら、他の基盤にとっとと乗り換えればよい。そのフットワークの良さを支えているものは、他でもない「的確なDB構造」だ。システムを支えるDB構造が素人レベルであるゆえに、開発・保守コストが本来の10倍以上かかっているうえに引っ越しもままならない。そんな悲惨な事例がそこらじゅうにある。

 技術者が設計スキルを身につけるだけでは十分ではない。開発案件の発注責任者が「業者によって提出されたデータモデルを評価できるようになる」ことも重要だ。的確なデータモデルを描くことは難しいが、発注側がそれを理解することは容易だからだ。ちょうど、注文住宅の建築図面を描くには専門性が要るが、そこに示された「わが家の形」に施主がイチャモンをつけることが容易であるのに似ている。

 発注側がデータモデルを読めるようになれば、システム要件が適切に仕様化されているかどうかを事前に判断しやすい。ひととおり出来上がった後に「こんなものが欲しかったわけではない」とあわてずに済む。また、業者を効果的にスクリーニングできる。難度の高い作業なので、オーディションの場で「モデリングライブ」をしてもらえば業者の実力がわかるからだ。じっさいソフトウエアというものは作りが極端にわかりにくい構造物で、発注側もそれなりに準備しておかないと、悪意がないとしても業者の食い物にされる恐れがある。

 「データモデリング&超高速開発ライブ」は、これまで東京で3回、大阪と新潟(動画)で各1回開催したのだが、今後も各地で開催する予定である。ユーザ企業の担当者はデータモデルを理解するために、技術者はデータモデリングを習得するために、近場のイベントに足を運んでほしい。

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コメント

 「データモデリング&超高速開発ライブ」の動画を非常に興味深く参照させて頂きました。自分がエントリーしていたらと想像すると、なかなかの緊張感だと思いますww

 ところで、データモデリングライブについては、やはり完全版の公開は難しいですかね?渡辺さんも仰っている通り、ライブ感を感じることが非常に勉強になると思うのですが(だからライブでやっていると思うので)、都合が付かず参加できない人は多いと思います。直接参加がベストとは思いますが、都合が付かないとか、興味はあるけど直接参加するほどではない多くの人達の啓発に動画公開は有効だと思います。

 とは言え、たくさんの一般の方々が参加していて、どこまで公開していいものか?など問題もあるとは思いますので、今後を踏まえての検討をして頂けたらうれしいなと思います。

 一方で、次回はぜひ直接目撃したいと企んでもいますので、イベントの企画もよろしくお願いいたしますww

投稿: くまきち | 2018.04.15 11:32

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