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2013.03.28

製造指示の設計と実装 (2)開始と完了

 前回記事「(1)日程化」では、製造指示を最小限度の手間で日程化するための枠組みを説明した。今回は製造指示を「発行」してから「完了報告」するまでの動きを見ていこう。

 製造指示の日程化が完了して、指示毎の開始日が到来したならば「指示書」を発行する。指示書を印刷せずに、指示データをスマートデバイス上で眺めながら作業を進めるケースも増えてきたが、紙に印刷された指示書はまだまだ活用されている。なんといってもお手軽だし、とくに製造指示書は材料や仕掛品に添えることで物品票や「かんばん」の役目も果たしてくれる。

 製造指示書には2種類ある。どの作業区でいつ作業するかを示す狭義の「製造指示書(図1①)」と、どの材料をどれだけ出庫すべきかを示す「材料出庫指示書(図1②)」だ。このシステムでは後者を発行する際に材料在庫がスキャンされ、出庫すべき材料の「候補ロット」がロケとともに印字されるようになっている。

図120130328_1

 材料がすべて揃うと「材料出庫実績報告」がなされる(図2)。その結果、在庫数量が引き落とされる(会計的には材料在庫が仕掛品在庫等に振り替えられる)。こうして材料は指示書とセットで工程(作業区)の脇に置かれ、作業の開始を待つことになる。なお、入力項目として「戻り日付」と「戻り数量」があるが、これらは作業後に余った材料を倉庫に戻す際に入力される。ここらへんを丁寧に分析することで部品表の精度が高まるので、こまめに入力したほうがいい。

図220130328_2

 作業区の稼動予定にもとづいて、いよいよ製造現場での作業が始まる。その際に工程毎の歩留まりや生産性、さらに労務時間や機械稼動時間といった実績データが収集される。このシステムでは、工程毎にそれらを入力するための機能「作業実績報告」が用意されている(図3①)。わずらわしい作業ではあるが、これもまたマスター情報の精度を高めてゆくためには欠かせない。

図320130328_3

 全工程の作業が終わると「完成実績報告」がなされる(図3②)。ふつうは1件の製造指示から新規ロットが1件生み出されるが、既存のロットへの追加入庫が起こったり、複数ロットが生み出されることもある。報告パネルはそんな状況を想定したデザインになっている。

 ここで製造指示まわりのモデルをもう一度見ておこう(図4)。前回よりも複雑に見えるのは、出庫/投入された材料のロット明細や、完成品のロット明細を含めてあるためだ。材料のどのロットがどの製造指示に使われたか。各ロットがどの製造指示で生み出されたか。そういったロットの追跡(トレーサビリティ)のための基礎情報となる。

図420130328_4

 新規ロットが報告されると、在庫計上されると同時に「要検査ロット」として自動登録される。ロットと検査に関するモデルを見よう(図5)。品目毎に検査内容が規定されていて、新規ロットが発生すると、品質管理部門(ヒンカンと通称される)がロットに対する検査指示を発行する。その結果が規定条件を満たせば、ロットはめでたく「良品」となる。ちなみにロット検査のプロセスは、製品ロットだけでなく、仕入先から入荷された材料ロットについても適用される。

図520130328_5

 以上の動きを業務フロー(DFD)で確認しておこう(図6)。新規の製造指示を登録して日程化する(1)。材料出庫して実績報告する(2)。工程作業を実施して作業実績を報告しつつ、最終工程であれば完成ロットを報告する(3)。さらに新規ロットについて品質検査する(4)。――こうしたさまざまな手順を経て、出荷可能な製品在庫は出来上がる。

図620130328_6_2

 図では簡単そうに見えるかもしれないが、指示から品質検査までの流れにおいて乗り越えるべき壁が2つあった。そのひとつ「工程(作業区)の能力に余力はあるか」については前回で説明した。2つ目の壁は「材料の在庫はあるか」だ。材料が欠品すればモノは作れないし、かといって欠品しないように大量に持てばコストがかかりすぎる。

 この問題を解決するためのしくみとして「資材所要量計算(MRP)」が有名だが、運用に苦労するわりになかなか効果があがらない。せいぜい欠品は減るものの余剰在庫が減らないという結果を招きがちだ(成功事例は数パーセントともいわれている)。それに代わってこのシステムには「在庫推移監視方式」という、より現実的でシンプルな在庫管理手法が組み込まれている。詳細については前回記事で挙げた参考書で確認してほしい。

 図6の5つ目の業務単位「外作仕入登録」をまだ説明していないが、これが次回「(3)外作」のテーマである。製造指示が受払だけでなく「売上」や「仕入」の計上をともなう理由になっている興味深い部分だ。

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