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2011.10.20

業務システムとWEBサービス

 便利なWEBサービスがいろいろと現れている。XEAD Driverの次のリリースでは、入力された郵便番号にもとづいて住所欄が初期設定されるようになるのだが、もとになる郵便番号情報はクラウド上にある。小さな工夫だが、こんな風にWEBサービスを手軽に組み込めるのも、ApacheのHttpClientライブラリのおかげだったりする。

 じっさいWEBサービスは便利な技術で、ひところはこれらを適宜組み合わせることで業務システムの開発が楽になると言われたものだ。たとえば、クラウド上の「顧客管理用サービス」と「受注管理用サービス」と「在庫管理用サービス」あたりをマッシュアップすることで、業務システムでさえも簡単に開発できるようになる――と。

 それが幻想であることは「クラウドと基幹システム」で述べたとおりだが、それは基幹システムにとってWEBサービスの意義が小さいという話ではない。通常のデータ処理に関しては限定された役目しか果たさないが、取引先との情報のやりとりに伴うデータ処理を合理化するために、WEBサービスは大きな役割を果たす。

 発注、検収、請求といったさまざまな情報が企業間でやりとりされるが、そのためのしくみは、次のいずれかに分類できる。現在でも、これら3種の混合で企業間通信はなされている。

・人間対人間
・サーバ対人間
・サーバ対サーバ

 「サーバ対人間」について補足しよう。このタイプで現在主流なやり方が、送信側のメールサーバから受け取ったメールを人間が確認して、内容にしたがって受信側システムに手動または半自動方式で登録する方式である。それなりにスマートに見えるが、少し前まではもっと奇怪な様相を呈していたものだ。顧客別の注文受信用端末をマシンルームにずらりと並べて、オペレータが時々端末の前に座って、神棚にお参りするかのように受信処理を執り行う。なにしろ顧客毎にマシンが違ったりするので、マシンルームが「マシンのショールーム」のようになったものだ。

 受信作業に人間や専用端末などが関わるとコストが余計にかかる。だから、「サーバ対サーバ」のタイプ(P2P、Peer to Peer)に置き換えてしまいたい。ナニモカモというわけにはいかないにせよ、WEBサービスはそのための鍵である。たとえば以下のような業務プロセスは、WEBサービスを使ったP2P処理に置き換えることが可能だ。

<発注系>
・商品一覧要求
・発注依頼
・納期要求
・検収報告

<受注系>
・商品一覧送信
・受注
・納期回答
・検収要求

 ふつうは発注側が強いので、発注系のしくみについては単一フォーマットで一揃い用意しておけばよい。いっぽう受注系については顧客毎にフォーマットが違い得るため、100の顧客があれば100のしくみが必要になり得る。これまでも業界標準フォーマットを整備しようとさまざまな試みがなされたが、どれも頓挫している。受注系フォーマットの雑多さというのは必要悪として受け入れざるを得ないのだろう。まさにそれゆえに「ショールーム化」も起こったわけなのだが、WEBサービスを追加するだけで済めば、コストはずっと小さい。

 今後の業務システムには、企業間通信用WEBサービスが標準機能として組み込まれる必要がある。新規顧客口座を作る際には、APIの仕様書をもらってサービスを通すことが手順に含まれる――そんな時代になってゆくだろう。しかし繰り返すが、WEBサービスが普及することでかえって高度な機能が要望されるようになることはあっても、システム開発そのものがこれまでより楽になるなんてことではない。

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コメント

始めまして。通りすがりのものです。

> これまでも業界標準フォーマットを整備しようとさまざまな試みがなされたが、どれも頓挫している。
> 今後の業務システムには、企業間通信用WEBサービスが標準機能として組み込まれる必要がある。

流通BMSが仰っておられる事を進めているように感じます。
大きな標準であるが故、ゆっくりとした歩幅ですが。
流通BMSをどう捉えておられますか?
流通BMSに必要な点は何だと考えておられますか?
宜しければお聞かせ頂きたく。

投稿: hi2 | 2011.10.27 12:11

hi2さま

流通BMS、すばらしい試みだと思います。

ただ、企業間でのデータ項目のマッピングは、同業種や特定業種が相手なのであれば楽でしょうが、現代の企業は多種多様な業種の企業とやりとりするようになっているので、一般には難しい。けっきょく自然言語の自動翻訳と同じ限界があります。ゆえに、マッピング問題より下位の規約や方式についてとりあえず標準化することを狙えば、企業間通信の合理化にはじゅうぶん寄与できると思います。進展を期待しています。

投稿: わたなべ | 2011.10.28 08:33

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