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2011.05.31

レファレンスモデルで社会貢献を

 大震災をきっかけに、自治体システムのレファレンスモデルを策定するという目標を掲げ「Project ICHIGAN」が発足した。さっそくHAT氏が拙作の「CONCEPTWARE/自治体」を紹介してくださった。私自身は河岸が遠いのでメンバーではないのだが、ぜひ活用してほしいと思うし、そのための協力は惜しまない。

 なお、自治体システム向け基本設計情報「CONCEPTWARE/自治体」は「Project ICHIGAN」にとって有用なリソースではあるが、そのバージョンは公開時の0.1.0から上がっていない。20個あるサブシステムの半分が未完のままだ(以下で★印がついている分。ただしデータモデルは完成している)。

01.住民データ管理サブシステム
02.選挙データ管理サブシステム
03.法人データ管理サブシステム
04.住民税データ管理サブシステム
05.固定資産税データ管理サブシステム
06.国民健保データ管理サブシステム
07.国民年金データ管理サブシステム★
08.老人福祉データ管理サブシステム★
09.障害者福祉データ管理サブシステム★
10.児童福祉データ管理サブシステム★
11.生活保護データ管理サブシステム★
12.特別給付データ管理サブシステム★
13.住民取引データ管理サブシステム
14.住民債権データ管理サブシステム★
15.レセプトデータ管理サブシステム
16.業者支払データ管理サブシステム★
17.住民情報閲覧管理サブシステム★
18.統計データ管理サブシステム
19.自治体データ管理サブシステム
20.システム制御サブシステム

 未完成のままなのは、優先順位の高い仕事が他にあったからなのだが、私だけでやるには限界があるということでもある。多くの技術者が関わることで事態が進展することを期待している。

 話は変わるが、ブログ記事からの印象からか、私が「ドメイン駆動設計」に批判的だと言われたりするのだが、心外である。私はドメイン駆動設計の実効性をある程度は認めている。なぜ「ある程度」かというと、その分析手法がいつまでたっても「社会貢献」する様子を見せないからだ。もちろん社会貢献を強制するつもりなどないのだが、「Project ICHIGAN」のような動きを見ても日本のソフト技術者の意識が高いことは明らかで、私などはどうしても期待してしまう。

 そもそも「分析手法が社会貢献する」とはどういう意味か。その手法を身につけた者が手弁当でシステムを分析するなんて派手なやり方もあろうが、もっと地味で効果的なやり方がある。その手法で生み出されたレファレンスモデルを知的社会資本として活用できるようにすることだ。個別にいちいちスクラッチモデリングするという悠長で非効率なやり方をやめ、ネットからダウンロードしたモデルを起点にして開発作業を始められるようにするためだ。

 モデルの社会資本化の手順はこう。「ドメイン駆動設計」された業務システムのコードをUML化して公開する。これだけ。仮にコードを公開することが難しいとしても、UMLで図式化した形であれば公開しやすいし、可読性や他の言語への展開を考えてもそのほうが都合が良い。

 この手法が「オブジェクト指向分析設計」と呼ばれていた頃からもうずいぶん時間がたっているので、事例は十分に蓄積されているはずだ。また、経験を重ねた設計者であれば、権利関係のしがらみのないモデルを案出することも難しくない。それなのにいつまでたっても、単純な販売管理システムのモデルさえ公開されない。オブジェクト指向分析設計やドメイン駆動設計に対して私が覚える疑問はこの1点に尽きる。

 そんなときに「Project ICHIGAN」を知り、自治体システム向けモデルが社会資本化されるべき公共性の高いネタであることを、あらためて思い知らされた。ぜひ、レファレンスモデル策定の過程で「CONCEPTWARE/自治体」をドメイン駆動型モデルに翻案してほしいと思う。同じ対象を異なる方法論で眺め回すことで、自治体システムのモデルとしてさらに品質が高まるだろう。なによりもこの機会をつかまえて、方法論の垣根を越えたレファレンスモデルの拡充による知的社会資本の増強をはかりたい。

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コメント

渡辺さん、はじめまして。ICHIGAN発起人の榊原と申します。
このエントリーで仰っていること、まさしくそのとおりだと思います。社会公共性の高いシステムが、共通のデザイン・コンセプトにのっとらず、バラバラな調達によって巨大なサイロの塊を作っていては、今回の震災のような有事対応のみならず、日常のシステム改善すらままならない様子は火を見るより明らかです。
是非、リファレンスモデルを参考にさせていただきたいと思います。スタディさせていただきます。
ありがとうございました。

投稿: 榊原 | 2011.06.01 11:15

渡辺さん 
豆蔵の羽生田です。パターンWG以来でしょうか、ご無沙汰しております。

今回は本サイトの記事としてIchiganを取り上げていただきありがとうございます。記事の趣旨も非常に大事なポイントだと思いました。渡辺さんがConceptwareで自治体を取り上げておられるというのは知りませんでした。非常に心強く思います。

ぜひ勉強させてください。今後ともよろしくお願いします。

投稿: 羽生田栄一 | 2011.06.01 12:38

>榊原さん

尊い活動を応援しています。問題は自治体システムだけではないんですけどね。被災した企業が基幹システムを立ち上げるために参考にできるデータモデルと業務マニュアルとUIの設計情報を含むレファレンスモデルもまた必要です。ICHIGANのテーマからはずれるでしょうが、そこらへんについてもご考慮いただけたらと期待しています。

>羽生田さん

おひさしぶりです。あのときの飲み会の楽しさをまだ覚えています。モデルに関してわからないことがあればいつでも連絡くださいね。

投稿: 渡辺 | 2011.06.01 12:44

渡辺さん、すごいです!!

投稿: 平鍋 | 2011.06.01 15:21

平鍋さん

おひさしぶりです~。UML版レファレンスモデルの公開、期待しています(^^)

投稿: 渡辺 | 2011.06.01 23:39

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