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2011.02.17

敵は「スクラッチ開発」にあり

 ゼロからシステムを組み上げるやり方(スクラッチ開発)にこだわっているという意味で、ウォーターフォール(WF)とアジャイルは同類である。WFの賛同者はしっかり管理したいゆえに、またアジャイラーはしっかりプログラミングしたいゆえに、スクラッチ開発を偏愛している。

 また両者は「業務システムはそれぞれユニークである」という信念についても共通している。この信念は間違っているわけではないが一面的なものだ。業務システムは「人の顔」のようなもので、それぞれがユニークでありながら、どれもが似通っている。それぞれユニークである点しか見ていなかったら、顔面認識ソフトのようなものは生まれ得ない。業務システムについても同様で、業種・業態毎の共通性に注目する余地がまだまだある。

 もうひとつ、スクラッチ開発の傾向を強化するものが「業務システムは企業の競争力の源泉である」という間違った思い込みだ。コンピュータが導入されていようがいまいが、バックオフィス(事務仕事)や事務所の建物を競争力の源泉とみなすような経営者はいない。それらはあくまでも企業活動を円滑にするための要素でしかない。それらがまともに機能しないゆえに事業活動が阻害されるということもあり得るが、その問題に対処しても「競争力が高まる」のではなく「まともなレベルになる」だけのことだ。もっとも重要なのは「本業の強さ」に他ならない。

 業務システムが支えるバックオフィスは、それぞれユニークでしかも企業の競争力の源泉である――そのように信じてくれているユーザ企業であれば、たっぷりコストをかけてシステム開発に取り組んでくれるだろう。しかし、システム開発者がそんな奇特な顧客ばかり相手にしようとすれば、確実にジリ貧である。

 以上の考察から私が推進している業務システム開発の改革手段が「パッケージ」である。ただしそれは、従来のパッケージとは以下の点が異なる。

1.モデル(基本設計)が添付されている
2.保守しやすい形で実装されている
3.無料で手に入る

 業務システムの導入に際して、まず類似のパッケージを探し出す。そして、動作確認しながら「個々のユニークさ」に沿った業務システムを派生させる。そんな開発手法が現実のものになる。そのやり方は米国流のアジャイル手法とはまるで異なるが、アジャイルさで本家を圧倒している。日本のお家芸として胸をはれるものになる可能性もある。

 システム開発を改革するために優先されるべきものは、WFかアジャイルかなどといったプロセス論の類ではない。暇人やお大尽にしか受け入れられない「スクラッチ開発」に対する批判である。スクラッチ開発を前提にしている限り、WFからもアジャイルからも、そしてモデリングやプログラミングからも、改善は生まれても改革は生まれない。

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コメント

私は5,6年程前から渡辺さんの著書を購読しているSEの端くれです。

最近驚くことがあり、是非渡辺さんのご意見をお聞きできたらと思いまして、コメントを寄稿させていただきました。

その驚いたこととは、最近のIT系の案件が、ソーシャル系やスマートフォン関連がほとんどということです。
(実は、私事ですが、ここ2年程は、IT業界を離れておりました。最近、復帰し付き合いのある案件紹介会社に案件を紹介してもらった次第です。)
各案件の求める必須要件には、PG要因としてのスキルのみで、上流工程のスキルは必要とされていないものばかりでした。

2年程前は、渡辺さんの御専門でもある業務システム系の案件がほとんどだったように思いますが、最近紹介された案件には1つもありませんでした。

渡辺さんに伺いたいこととしては、2つあります。
まず1つめは、実際、業務システム系の案件は減ってきているのでしょうか。減ってきているとしたらどんな原因でしょうか。

そして2つめは、業務システムを設計(上流工程)する技術者の需要は、将来どうなるのでしょうか。

再び私事で恐縮ですが、渡辺さんの名著書「業務システムのための上流工程入門」にあるような技術、知識をもったSEとして案件を請けれたらと思っています。

投稿: 放浪技術者 | 2011.02.18 23:15

放浪技術者さん

不況で開発案件そのものが減っているというのもありますが、一次請けがこれまで下請にまわしていた仕事を内作するようになったというのが大きいのではないでしょうか。同時に、言われるような新分野の開発案件が増加しているので相対的に業務システムの案件が妙に減っているように見えるのでしょう。

設計スキルへの需要についてですが、これまではスキルがあってもなくても案件に関われていた面があると思います。設計まで下請まかせにしていた一次請けが、内作しようとして苦労しているという話も聞きます。受注状況は厳しいですが、そういう意味では水ぶくれした人海戦術体制を少数精鋭化するチャンスなのかもしれません。がんばりましょう(^^)

投稿: わたなべ | 2011.02.19 11:13

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