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2010.09.12

技術者にリフレッシュ休暇を「強制」せよ

 企業の基幹システムの面倒を見ている技術者には、年に1週間連続して休暇をとることを強制したほうがいい。ワークライフバランスがどやこやの話ではない。休暇が難しいのなら、1週間職場から離れざるを得ない業務の指示でもいい。そうすることで、彼/彼女(いちいちこう書くのは面倒なので、以降は彼と書く)の技術者としての仕事が誠実になされたかどうかを定期的に検証できるからだ。

 主任技術者をシステムから一定期間引き剥がすことで、そのシステムについてわかることがある。運用・保守・改修のためのドキュメント(仕様書や運用マニュアル)が整備されているか、そして、それにもとづくバックアップ体制が機能するか、がわかる。なぜそんなことを調べる必要があるかというと、担当者はさまざまな理由で突然いなくなることがあるからだ。

 彼が、ゴルゴ13のように飛行機事故に遭っても死なない可能性は低い。また、ゴルゴ13のようにエボラウィルスに感染しても入院せずに快復できる可能性は低い。また、ゴルゴ13のように依頼主(雇用主)を裏切らない(転職しない)可能性は低い。ようするにさまざまな理由で彼が長期間にわたって職場から突然いなくなる可能性は高いわけで、その際に業務が混乱して収拾がつかなくなることは目に見えている。にもかかわらず、コトが起きたときにそれを回避できなかったとすれば、責任は彼の上司にあるのだろう。しかし、それで済む話だろうか。

 あやしい宗教団体でもない限り、組織は特定のメンバーにその存続をゆだねるようなことはしない。とくに営利企業のようにさまざまなステークホルダーとの社会関係にもとづいて機能している組織は、メンバーが突然欠けても、しばらくすれば何事もなかったような日常に戻るようにできていなければいけない。

 職業がらさまざまなユーザ企業を見てきたが、コマネズミのように走り回ってシステムの面倒を見てくれる技術者がいたりする。はた目には、熱心で有能で頼りがいがある人物のように見える。そんなときは職場の誰かをつかまえて「彼が1週間いなくなっても業務はまわりますか?」と問うてみたらいい。「彼がいなければ無理だろう」という答しか返ってこないようであれば、その会社/システムは危機的状況にあるといっていい。

 担当者に悪意がなくても、「彼がいなければ無理」な状況は招来され得る。なぜか。「自分がいなければシステムを運用・保守・改修できない」という状況は、結果的に彼の雇用意義(エンプロイアビリティ)を強化するからだ。最初はそのような意図がなかったとしても、ある日そうなっていることに気づいたなら、高いレベルに引き上げられた自分の雇用意義をむざむざ低下させることなどなかなかできるものではない。会社にとって欠かせない人物になった彼は「しめしめ」と思っているかもしれないし、「これではまずい」と思っているかもしれない。どちらであっても、客観的には危機的状況である事実に変わりはない。

 恐れはしばしば保守的な行動パターンを強化するものだ。たとえ当人が「これではまずい」と思っていても、組織から何らかの強い働きかけがなかったら、それまでの行動を繰り返すだけかもしれない。かえって意固地になって「アジャイル手法だから仕様書は作らないんだ」なんてキテレツな強弁くらいするかもしれない。

 そんな事態を打開するための感情的きっかけを与えるためにも、技術者には年に1度のリフレッシュ休暇を強制したらよい。それが無理なら、数日間に渡る研修コースなどに定期的にほうりこむようにしたらよい。担当者が現役のままで業務が滞ってしまえば明らかに責任を問われるので、ほっといても文書化が進むだろうし、体制強化案も必要に応じて上申されるだろう。「死んだときのためにたんねんにドキュメントを残しましょう」なんてイヤな心得を掲げて済ますよりよほど効果的だ。

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