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2010.08.20

ウォーターフォールがなくならない理由

 ウォーターフォール方式の開発手法は蛇蝎のように嫌われている。これこそ諸悪の根源で、私やあなたが不幸なのはウォーターフォール方式のせいだと言われている。

 昔からそのように言われ続けているわりに、この古(いにしえ)の開発方式がなくならないのはなぜなのか。その理由として「開発標準策定者の悪しき保守主義」とか「アジャイル方式やその適用の未熟」あたりが取り沙汰されがちだが、いくらなんでも20年間そのように言われ続けて対処されないのはおかしい。原因は別にあると考えたほうが自然だ。

 私の観察では、その原因は「レファレンスモデルとモデルシステムの欠如」にある。それはちょうど、建築業界で「モデルハウス」や「無料で入れたり眺めたりできるビル」が存在していない状況に喩えることができる。そんな状況で自分の家を「アジャイル」に建設したいと顧客は望むだろうか。私なら、はじめに図面をしっかり完成させてから作り始めてほしいと思う。モデルハウスがないのであれば、ウォーターフォールで進めたくなるのが人情であろう。

 そもそも、実際にはモデルハウスが存在しているのにもかかわらず、建設業界はウォーターフォール式の建設手法をとっている。それは高価な建築資材がかかわるためで、「施主の要求を明らかにするためにとりあえず作ってみる」というやり方が通用しないからだ。また、モデルハウスとはいっても、それに直接手を入れてお望みの住宅が手に入る、という性質のものでもないからだ。そのため、「住宅は3度目の新築でようやく満足ゆくものになる」と言われている。

 いっぽうソフトウエア開発は資材に制約されないので本来はアジャイル方式に向いているはずなのに、その特性を生かしきれていない。それは「業務システムのモデルハウス」がないためである。「レファレンスモデルとモデルシステム」がその役目を果たす。

 「レファレンスモデル」とは、データモデルや業務マニュアルを含んだ基本設計情報の無料ライブラリのことだ。システム開発を思いついた時点で、近いものを見つけてきて叩き台として基本設計をまとめてしまえばよい。その過程で大仰な「超上流のためのノウハウ」なども要らない。

 「レファレンスモデル」は強力なリソースだが、これだけではまだウォーターフォールから逃れられない。業務システムというものはソフトウエアとして大きすぎて、「少しずつリリースして検証する」というアジャイルなスタイルとなじまないからだ。

 それゆえに「モデルシステム」が要る。これは、レファレンスモデルにもとづいて実装が完了している「そのまま使えるシステム」の無料ライブラリのことだ。

 モデルシステムはERPのような従来のパッケージシステムとどこが違うのか。レファレンスモデルが付随している点、それに、カスタマイズやアドオン開発がしやすい点だ。アプリケーションドライバ(*1)ベースのものであれば、プログラムコードではなく仕様書を変更するだけでカスタマイズできる。その際にはデータモデル(レファレンスモデル)をじゅうぶん理解しておく必要があるが、データベースシステムである限りはしかたがない。

 モデルシステムを実際にユーザーに使ってもらってフィット&ギャップ分析を行い、その結果をレファレンスモデルにフィードバックして基本設計を派生させる。そして、モデルシステムをどんな手順でカスタマイズして順次リリースしていくかを計画する。これでようやくアジャイル方式を実践できる。

 業種・業態毎のレファレンスモデルとモデルシステムを充実させる。これで、ウォーターフォールからアジャイルに移行するために足りなかったものが補われる。それが我々の「システム開発補完計画」である(と書くとなんだかカッコイイなあ)。

*1.詳細仕様情報にもとづいてシステムを動的に立ち上げるための基盤ソフトウエア。筆者謹製のアプリケーションドライバXEAD Driverの開発が進められている。

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