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2006.12.30

アナログ人間ほどコンピュータに向いている

 「自分はナントカだから、もともとコンピュータには向いてないんですけどね」コンピュータ関連の仕事をやっている人から筆者は何度このセリフを聞かされたかわからない。「ナントカ」の部分にはいろんな言葉が代入される。「アナログ人間」とか「ウエットな(情緒的という意味らしい)人間」とか「フィーリングで生きている人間」なんて言い方も何度か聞いた。

 若い技術者は、お酒の席あたりで自分がいかにコンピュータに向いていないかを喜んで語りたがるものだ。自分の可能性はコンピュータ以外の世界にも広がっている。そういうことを確認したくて言うのかもしれないが、なんとなく往生際が悪い。ある程度年季を積んだオトナは、自分の職業選択に対して良くも悪くも諦念を持つようになってそんなことは言わなくなるものだ。

 それにしても、それらの「コンピュータに向かない根拠」はどれも薄弱ではある。アナログでない人間はいないし、筆者が知っている同業者の100%は情緒的だ。「フィーリングで生きている」なんて、あまりにフィーリング的な言い方で意味不明である。そもそも、「道具をうまく使うためには、ユーザ自身がその道具の特性を備えていなければならない」という主張がおかしい。「自分はアナログ人間だからコンピュータは苦手」と言うのは「私は石頭ではないから、硬い漬物石を使って漬物を作るのは苦手だ」と言うようなものだ(って変な喩えだ)。

 勘違いされがちだが、情緒は人間に与えられたもっとも高度な能力のひとつである。決してそれは、より本能的、動物的な脳の働きなどではない。情緒こそ人生観や意欲、そして深い知性の源泉だ。有能な人々を思い出せばわかる。彼らは他に抜きん出て感情生活が豊かだ。

 筆者はむしろ、情緒的な度合いが高い人ほどコンピュータの仕事に向いているのではないかと思う。感情の機微をとらえたCG映像や音楽シーケンス、個人の感情の集積である社会を統御するコンピュータシステム。そういった創作物を生み出すためには、人並み以上の情緒性が求められる。デジタルであるゆえにこそ、コンピュータの性能が高いほど、よりアナログなユーザを求めることにはならないだろうか。

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