« 「押しかけ実況書記」のススメ | トップページ | 販売管理向けのレファレンスモデルを公開 »

2006.10.21

包丁とバーナーは男のたしなみである(かも)

 魚や動物をさばくこと。板金を溶接できること。必要に応じてそういう仕事をパッとやってしまう男はカッコいい。それはどちらかと言えば男が男にほれるようなタイプのカッコよさなので、「粋」とか「イナセ」なんて言い方がぴったりだ。

 そんな風に昔から思っていたのは、明らかにオヤジの影響による。オヤジが手際よく魚をさばいたり包丁を砥いだりする様子や、バーナーの炎の青白さや匂いをはっきり思い出せる。あの世代の男たちにとってそれらはありきたりの技能で、それをやれることがカッコいいと感じる感覚がそもそも彼らには理解できないかもしれない。

 2年ほど前に瀬戸内海の小島の民宿に泊まったときのことだ。禿頭がカッコいい年配の男性客に、夕食時にふと思い出してその話をふってみたことがある。案に相違なく、彼は魚も鳥も猪もふつうにさばくし、溶接も上手らしかった。得意気という風情もなく、魚のさばき方や溶接のコツに関する私のこまごまとした詮索に丁寧に答えてくれた。

 包丁もバーナーも、具体的な必要があって用いる道具で、「さて、たまには溶接でもしようかな」などと思い立って取り出すようなものではない。男たちがそれを使えたのも、たんに彼らが暮らす生活の中でそれが上手くなければやっていけない事情があっただけのことではある。

 今ではそんな必要はほとんどなくなってしまった。魚なんか朔(さく)や刺身の状態で売られているのがふつうだ。あの頃にオヤジが何のためにバーナーをよく使っていたのかは思い出せないのだが、都会のマンションでふつうに暮らす限り何かを溶接する必要なんてまずない。

 しかし、大人の男がそれらの道具を使いこなす様子は、あこがれとして子供の心に刻み込まれてしまった。包丁とバーナーを使える男はカッコいい。その感情はもう取り消すことができない。

 あの頃のオヤジと同年齢になった自分にはそれらの技能がない。そんな引け目を感じていた矢先、島根の港から天然モノのハマチがクール便で送られてきた。突然、我が家のまな板にあの美しい魚がどんと載ったのである。まるごとのハマチの料理を家内にまかせてしまうのは男のコケンにかかわるので、切れ味の悪い包丁をだましだましなんとか刺身におろした。

 包丁の腕は非常にまずかったが魚そのものが非常に美味かったため、家内は1ヶ月に1度は島根から直送してもらうと言い出した。なんでも毎回どんな魚が来るかはわからないが、とれとれの上質の魚が3種くらいまとまって来るのだという。私としても真剣に取り組むために、難波の道具屋筋で出刃と柳刃(各1万円也)と料理本とを買い込んだ。

 それ以来、毎月1度、板前となって家族のために腕をふるうようになって1年たった。マダイ、キダイ、アジ、メダイ、クロダイ、イサキ、スズキ、ハマチ、ツバス、トビウオ、スルメイカ、マイカ、マダコなどなど、いろんな天然魚介類をおろしていくうちに腕はいやでも上達する。子供たちも刺身を醤油もつけずにパクパク食べるほどに魚好きになった。家族の喜ぶ様子を眺めながら、かつてのオヤジのようにニコニコしながら日本酒をちびちびやっている。

 男の憧憬を成就するために、残るは「溶接」である。しかし、月に1度はいやでも溶接するハメになる状況なんて、いったいどうやって作り出せばいいんだ?

|

« 「押しかけ実況書記」のススメ | トップページ | 販売管理向けのレファレンスモデルを公開 »

コメント

ねこに・こばーんです。こんばんわ。

2005年5月号の「インタフェース」誌 P194~P195
シニアエンジニアの技術草子 第四捨九之段
◆包丁研ぎは男の仕事

やはり、エンジニアの考える事は非常に似通っていますね(^^。

なお、溶接される際はくれぐれも溶接焼けにご注意を!!!
コンベアのヨークを溶接の時、真っ黒けになりました(-_-;)。

では

投稿: ねこに・こばーん | 2006.11.11 18:24

こばーんさんは、ソフトウエアも書くし現場で溶接もやってしまうってことですか。カッコいいなあ。溶接焼けに注意、ですね。アドバイスありがとうございます。

投稿: わたなべ | 2006.11.14 08:25

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 包丁とバーナーは男のたしなみである(かも):

« 「押しかけ実況書記」のススメ | トップページ | 販売管理向けのレファレンスモデルを公開 »