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2006.10.08

購買のポイントは「安さ」よりも「納期の信頼感」

■「良い品が安い」だけでは十分ではない

 在庫管理に関する業務知識ネタをひとつ。複数の仕入先から同一品目を購入するような体制のことを「複社購買」と言う。広く実践されているやり方で、近日公開予定の「CONCEPTWARE/販売管理」もそれを前提としてデザインされている。ただし、複社購買の考え方は典型的な「全体最適化をもたらさない部分最適化」の事態を招くことがあるので注意が要る。

 「複社購買」に関連する年次業務として「契約更改」というものがある。仕入先が扱い商品の販売単価の一覧を提出し、購買担当者はそれを見ながら品目毎にどこを主要調達先とするかを決める。仕入先毎の調達比率を決めるところもある。その際の判断基準は基本的に「品質」と「安さ」だ。仕入先としても、相手が複社購買の体制をとっていることを知っているので、年間の主要仕入先の地位を得るべく高品質と安価を提案する。これで、品質を維持しながらも仕入単価を抑えていけると期待はできそうだが、それが実現できたとしてもシアワセになるとは限らない。

 意図的に仕入先同士を競合させて仕入単価を下げる。そのために複社購買を実施しているような企業では、「年間の単位あたり仕入額を何パーセント安くできたか」とか「いかに値引きできたか」が購買担当者の評価基準になっていたりする。そこまで徹底してしまうと、仕入先が疲弊するだけでなく、購買している会社そのものも全体最適化からほど遠い状況に陥りやすい。

 どういうことかというと、購買担当者が、安い仕入先からは積極的に買ういっぽう、高い仕入先からは買い渋る。前者が扱う物資が逼迫しがちで後者の物資がダブつきがちなんて偶然は期待できない。ゆえに、結果的に、全体的にダブついているわりに必要なタイミングで物資が足りないという在庫状況を招きやすい。典型的な「全体最適化をもたらさない部分最適化」の事例となる。

■Deliveryの重要性

 そもそも「複社購買」は、本来は物資の安定確保のためになされる。それは「ロジスティクス(兵站。へいたん)」の基本で、補給ルートが1箇所絶たれただけでアウトになるようであってはいけない。重要な資材であるほど「複社購買」を励行すべきだが、それは調達コストを安くあげるのが本来の目的ではなく、物資の安定確保のためである。

 「安定確保」だけではない。「緊急調達への対応」や「納期の遵守」といった、QCD(Quality,Cost,)で言うところの「D(Delivery, 納入)」の重要性はもっと意識されていいい。換言すれば、「品質」だけでなく、「タイミングの良い納入」も商品のコストに含まれているという事実は広く理解されるべきだ。

 だから、品質に問題がないのであれば、緊急調達に応えてくれるなら価格については一定のレベルで目をつぶるという判断もときには必要である。きわどいタイミングで調達できれば、企業全体としてのスループットが調達のための余分なコストを上回り得るからだ(そういう例がゴールドラットの小説「ゴール」で活写されている)。また、いくら安くても納期をなかなか明確にしてくれなかったり、いったん約束した納期がやたらとぶれるようであってもまずい。そこらへんについて信頼できるなら、少しくらい価格が高くてもずっと付き合いやすい仕入先である。なぜなら、現代の在庫管理における主要な管理課題が「品質軸(ロット管理)」や「空間軸(配置管理)」から「時間軸(未来在庫管理)」へと拡大しているからだ。

 もし高コストなシステムを利用しているわりに購買担当者が十年一日のように購入価格の安さのみに拘泥しているとしたら、業務システムや購買部としての馬脚がそこに現れていると考えていい。未来在庫が見えないようなお粗末な在庫管理システムを使っているのなら、とりあえずわかりやすい指標として仕入価格の安さを問題にしたくなるのが人情だからだ。

 付言すればこれは、業務システムの仕様の問題だけでなく、購買担当者の評価基準の問題でもある。短期的な粗利確保のためではなく、上述したように在庫の時間管理上のパフォーマンスでも評価されるような基準が必要だ。業務システムの仕様のベクトルと、評価制度のベクトルとがその方向で一致すれば、在庫管理システムは企業活動を強力に補佐する道具立てとなる。

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