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2006.09.16

「オーバースペック」でコストが下がる話

 「革新的生産スケジューリング入門」や「BOM入門」といった、生産管理に関する優れた著作を書かれた佐藤知一さんと神戸でおしゃべりしてきた。さすが「工場そのものの開発」に携わってきた佐藤さんだけあって、面白い話をいろいろと聞かせていただいた。それらの中から、設計者のまっとうなコスト感覚が建設現場での障害をもたらすという話を紹介したい。

 佐藤さんが本業で扱う化学プラントにおいて、いちばん目に付く部品は「パイプ」である。素人には想像を絶するが、その種類はじつに4千点にものぼるのだそうだ。口径や長さはもとより、壁面の厚さや付随するバルブの仕様だのなんだのが順列組み合わせ的に関係するためだ。

 で、プラントの設計者は、要求性能にぴったり沿うパイプを用いて各モジュールを設計する。たとえば100の強度を要求する部分には100の強度を保障するパイプを組み込む。あたりまえの話だ。そんなところに200の強度を保障するパイプ、つまり「オーバースペック」なパイプを組み込んでいてはモジュールとしてコストアップしてしまう。

 ところが、この誠実な判断がプラントの建設現場で問題を生じさせてしまう。なにしろ4千のバリエーションの中から恣意的に選ばれるために、プラントの建設現場で必要な仕様のパイプがしばしば足りなくなるのである。たとえ200の強度のパイプが余っていても、図面上100の強度のパイプを用いるべき部分にそれを流用することは、当然ながら禁じられている。結果的に、部品の追加手配や日程遅れなどのさまざまな追加コストが生じる。

 もちろん、モジュール毎の要求資材を的確に部品展開して慎重に調達すべき話ではある。しかし、プラントほどの巨大建造物でそれは言うは易しである。どうしてもさまざまな部品が余ったり足りなくなったりする。

 このような状況を避けるための良いアイデアがある。4千点ではなく、たとえば500点とか1000点に絞り込んだバリエーションの中から部品を選び出すようにモジュールを設計すればよい。「アンダースペック」は許されないし、「ジャストスペック」がバリエーションの中で見つかる確率が小さいので、結果的にさまざまに「オーバースペック」な設計がなされることになる。しかし、部品の調達コストは確実に減る。部分最適が必ずしも全体最適をもたらさないという事実をイメージしやすい面白い話だ。

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コメント

 15年ほど前に読んで衝撃を受けた、増井さんの有名な論文「富豪的プログラミング」を思い出しました。ソニーに居られた時に知ったのですが今は産業技術総合研究所というところに勤められてるようです。ソニー携帯の予測型日本語入力システムを作られた方です。
http://pitecan.com/articles/Bit/Fugo/fugo.html

 今の若い人は富豪しか知らないので、この論文も「古きよき時代の寓話」としか感じられないでしょうね。

 この話をプログラムレベルから、それの組み合わせに広げ「富豪的フレームワーク」が出来れば楽しいですね。

投稿: HAT | 2006.09.20 11:10

HATさん

15年も昔とはいえ面白い論文ですね。確かにフレームワークなんて富豪的じゃなきゃいかんですね。最小限度の指示さえすれば、あとは機械がよろしくやってくれると。執事を雇ってる感覚だなあ。

投稿: わたなべ | 2006.09.22 03:29

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