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2006.07.29

文章術:断言して根拠を示す

 文章を書くことに苦手意識があったら、システム設計の仕事は務まらない。設計情報には図面だけでなく、相応量の文章が添えられるのがふつうだからだ。そして、キャリアの初期にまっとうな文章能力を身につけておいたほうがいい。設計の仕事をまかされてから文章力を磨こうというのではドロナワに過ぎる。

 筆者はそれまでも文章を書くことが好きだったが、10年前にある本を読んでからますます好きになった。それ以前は良くも悪くも「情緒優位な文章」を書いていたのだが、その本を読んでからは論理で畳み込んでゆくスタイルにすっかり変わってしまった。それほどにその読書体験は強烈だった。じっさい、筆者の最初の本(「データモデリング入門」)はその著者が書いた本の影響を強く受けている。文章書きのための参考書は山ほど出ているが、訊かれたときには筆者は今でも迷わずにその本を薦めている。

 それが、小野田博一著「論理的に話す方法」(日本実業出版社,1996)だ。その本では「断言せよ。そして根拠を示せ」という単純で明確な主張がしつこいくらいに強調されている。本全体のテーマといってもいい。

 「根拠を示して断言する」ことの重要性は日本では意外と理解されていない。大新聞であっても、

 Aである。Bである。我々はそろそろCすべき時に来ているのではなかろうか。(意訳:A、B、Cに論理的なつながりはないが、Cすべきであるという私の気持ちは察して欲しい)

 といった調子のユルい文章がふつうに見られる。日常的な会話において明確な主張を避ける習慣は良好に働くことが多いが、文章ではしばしば問題になる。日常的な感覚で文章をまとめると、けっきょく何が言いたいのかよくわからないシロモノになりやすい。身の回りにあふれるそんな文章ばかり読んでいたら、論理的な文章なんて書けるはずもない。

 学校でも論理的な文章の書き方なんてまず教えない。義務教育での作文教育で評価されるのは「うれしかった気持ちがよく表れている」ような情緒的な文章だったりする(ただし、たとえ情緒的であっても「うんざりした気持ちがよく表れている」ような文章はあまり評価されない)。だから我々は、上掲のような参考書を用いて意識的に学ぶ必要がある。

 恐れずに明確に主張すること。これを意識するだけで文章全体の印象は大きく変わる。明確な主張を支えるための根拠をじっくりと考えるようになるからだ。言い換えれば、充分な根拠となることだけを盛り込むようになる。言っても言わなくてもよい事柄を載せる必然性がなくなって、すっきりと締まった文章になる。

 当然ながら、主張が明確でない情緒優位な文章スタイルがダメという話ではない。特定のスタイルでしか書けないのが問題なのである。必要に応じてスタイルを使い分けできたほうがいい。とくにビジネスシーンでは圧倒的に論理優位な文章スタイルが求められる。別の場面では、情緒優位な、想いをつづるだけの文章を綴るのもまたよい。そんな使い分けができることもまた文章力の一部で、その必要を感じているのであれば、この本の一読をお勧めしたい。

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