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2006.03.04

けっきょくすべてが「SE本」

 「CONCEPTWARE/金融」を構想していたりするので、「SEの金融知識」(土屋清美著,日経BP社)という本を読んだ。著者が実際に金融システムの開発に関わったときの逸話が盛り込まれていて面白かったし、金融の難しい用語もわかりやすく説明されていてためになった。お奨めである。あえて難点を挙げるなら、システムの基本的なモジュール構成(この本ではフロント、ミドル、バック、情報系に区分している)毎の役割や特性が説明されていたり、「情報系ではデータベースの正規化崩しが重要」といった一般的な指針が述べられているものの、それ以上につっこんだ設計ノウハウが説明されていないのが残念だ。

 最近、この種の「SEのためのXX知識」という趣旨の本が多く出版されている。職業柄、ひととおり目を通すことにしているが、なんとも腑に落ちないことがある。「SEのための」と謳うのであれば、「ことのほかSEに役立つ業務知識」でありそうだが、どうもそうでもないのだ。

 確かにその種の本には、各業界でのITを用いた取り組みが書かれていたりはするが、そういう知識は今や業界人全体にとって重要な知識となりつつある。上記の本も、金融業界に興味がある一般人にとっても確実に役に立つはずだ。だから、分野別の専門知識にITに関する諸問題を多少からませたくらいでは「ことのほかSEに役立つ業務知識」にはならない。にもかかわらずそういう本に「SEのための...」のタイトルがつくのは、この出版不況において「SE本」がそれなりに売れ筋だからなのだろう。

 ではそもそも「ことのほかSEに役立つ業務知識」であることの要件は何なのかというと、データベースやプログラム設計に関するノウハウが盛り込まれている点ではないかと筆者は考える。各分野での特性や特徴的な取引を管理するためにどのようなデータベースやロジックが必要とされているか。そういうノウハウと統合されている業務分野の知識体系こそが、SEの狭義の「業務知識」ではないだろうか。その業務を支援するためのサーバ上のモジュールがどうあるべきか。そこらへんの洞察をもたらさない知識は、SEにとっては雑学のたぐいでしかない。

 これを換言すれば、知識の価値は受取側の問題でもある。読み手にしっかりしたスキルがありさえすれば、業界毎の用語や概念の位置づけを学べる本はすべからくシステム開発の手がかりになる。断片的で矛盾に満ちたユーザの発言から、整合性のとれたシステム構造を組み立てることを生業にするSEにとっては、「ナースのための医療事務の基本」とか「3時間でわかる年金と社会保険」なんて本でもデータベース設計やモジュール設計のための立派な素材になる。だからある意味では、書店にはタイトルがどうあれ「SE本」があふれている。「SEのためのホゲホゲ」が売られていないからといって、ホゲホゲの勉強にまったく支障はない。

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コメント

「CONCEPTWARE/金融」とはまた大構想ですね。一口に金融といっても、銀行、証券、保険では、データモデルもビジネスプロセスもずいぶん違うと思いますが...

投稿: ひらさわ | 2006.03.05 00:32

とりあえず興味があるのは保険なので「CONCEPTWARE/生命保険」あたりから始めたいと思っています。

投稿: わたなべ | 2006.03.05 08:39

生保ですか、それはいいですね。
銀行、証券、損保の仕事は多少やったことがありますが、生保は経験がないので楽しみです。

投稿: ひらさわ | 2006.03.05 13:16

さすが手広いですねえ。またいろいろ教えてください(^^)

投稿: わたなべ | 2006.03.05 18:11

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