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2005.11.19

心楽しい無間地獄へ

 システム開発の局面はそれぞれ独特な感情に彩られている。楽しいこともあれば辛いこともある。辛い工程も、その後に続く楽しい工程への期待があれば耐えられる。

 ホワイトボードを使ってどんどんモデリングする局面は楽しい。ややこしい要件を捌く難儀さはあるにせよ、腕や体を大きく動かして大きな絵を描くことの楽しさが勝っている。システム開発が始まったことを祝うお祭りのようなワクワク感にあふれている。

 ところが、手書きのモデルをモデリングツール上でまとめる時点になると、辛いことのほうが多くなる。それまでの伸びやかさがシオシオとしぼんで、扱う問題が急にこまごまと辛気臭い感じになってしまう。ホワイトボードの前では気づかなかった矛盾に気づくこともある。「お気楽に描きちらしやがって」と自分自身に悪態をついたりする。

 そんな調子で基本設計をまとめ終わって疲れ果てた後に、詳細設計でますますヘロヘロになる。それでもがんばる。なぜなら、その後に楽しいことが待っているからだ。

 それまでドキュメント上でしか存在していなかったプログラムの「本物」が画面に立ち上がる。ずっと文通していた相手と会ったようなときめきを覚える。「ああ、やっと来てくれたんだね」とプログラマといっしょにニコニコと画面を見つめていたりする。

 システムテストの過程は一転して辛い時期だ。いろいろな設計ミスやバグが現われてその対応に追われる。賽の河原で石を積むような徒労感を感じながらもがんばる。なぜなら、遅かれ早かれシステムが完成して、いちばんうれしい局面が来ることがわかっているからだ。

 いろんなドサクサののち、システムは稼動する。ユーザーがプログラムを実務で使い始める。それを眺めるときのドキドキ感。それを見れば、新人の技術者は自分たちがやってきたことが「プログラム開発」でも「データベース開発」でもなく「業務開発」であったことに気づく。ソフトウエアの専門家がリアルな世界を変化させたことの静かで深い喜びがある。

 プロジェクトが終わる。単純に精算してみれば、辛いことのほうが多いのかもしれない。それでも次のプロジェクトが始まればまたがんばろうという気になる。なぜなら、ホワイトボード上でモデルを描き広げる楽しさからコトが始まることがわかっているから。

 お人好しだけがはまる無間地獄のようなものだ。だけどそれはさまざまな感情で虹のように彩られている心楽しい道行きである。

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