« モデルにインスタンスを併記できることの意味 | トップページ | 「実装独立」な設計を用意することの意義 »

2005.07.30

ビジネスリーダーに必要な「経営の3言語」

ビジネスリーダーには「経営の3言語」が必要である――これは何年か前にビジネス雑誌で読んで強く印象に残った意見だったのだが、誰が書いていたのか覚えておかなかったのを悔やんでいた。最近それがコンサル会社の社長さんでもある会計士の山根節(やまねたかし)氏の意見であることがわかった。彼の言う「情報リテラシーとしての経営の3言語」とは、自然言語・コンピュータ言語・会計言語のことだ。これらはビジネスリーダーだけでなく、企業システムの開発者が身につけておくべき基本的素養でもある。

◆1.自然言語

自然言語とは、一義的に母国語を指します。日本語がキチンと操れない人は、職人には向いても組織のリーダーには向きません。(「経営の大局をつかむ会計」山根節、光文社新書)

氏の言うように、母国語が洗練されていないようではリーダーは務まらない。リーダーは折に触れて所属メンバーにチームの方針や理念を語らねばならない。「黙ってオレについてこい」でついてくるような純朴なメンバーは今どき期待できないし、企業コンプライアンスの見地から言っても問題がある。端的で、同意しやすく、かつ誠実な言葉を使って、リーダーは語り、そして書かねばならない。そして、それがいかに輝かしいものであろうと「自分の経験」という名の牢獄に閉じ込められないために、リーダーはよく読み、よく聴く者でなければならない。

とくに日本のソフト技術者にとって、母国語の有能さは今後ますます重要になる。なぜなら、日本語を操れる外国人技術者が業界になだれ込んでくるからだ。とくに、漢字に馴染んでいる中国人技術者にとって、日本語の読み書きは参入障壁として決して高くない。遅かれ早かれ、そこそこの日本人技術者よりもうまく読み書きできる腕利きの外国人技術者が数多く現れるだろう。そうなったとき、もし中学生並みの読み書きしかできないとしたら日本人技術者の居場所はない。

◆2.コンピュータ言語

山根氏はプログラミング言語として語っているが、もっと広い意味でとらえてもいいと思う。プログラミング言語を1個でも習得していることを一般のビジネスマンに期待するのは無理があるが、「コンピュータでできることとできないことの洞察」といったレベルならば無理がないからだ。

だから、「コンピュータのことはよくわからないから一任している」なんて言って平然としている経営者はいまどきちょっとこわい。本人は度量の広さを見せているつもりかもしれないが、コンピュータに詳しい人間にカモにされそうで危なっかしい。せめて、コンピュータ利用に関する経営判断をせまられたら、完全に腹に落ちるまでしつこくコンピュータ屋に食い下がるくらいのプライドは見せてほしいものだ。

とはいうものの、ど素人がビジネスでのコンピュータの利用に関する洞察を得るのは、想像するよりもずっと難しいのかもしれない。3年前にはコンピュータに詳しい人間でさえも想像できなかったことが、現在では可能になっている。そんな調子だから、素人が「経営的に効果のあるソフトウエアやネットワーク技術の新しい組み合わせ」を発想するなんて、実際のところ簡単ではなさそうだ。

その意味で、一度はシステム開発の世界に関わることが、今後ビジネスリーダーとしての実力を高めるためのキャリアプランとして有効なのかもしれない。ITを活用して新しい事業スタイルを作り上げた経営者の多くが、過去にシステム開発やネットワークの世界に深く関わった経験を持っている。起業家精神を持つ若者なら、一度はシステム開発の世界にどっぷりつかってみて損はないと思う。

◆3.会計言語

「会計(accounting)」とは「数える(count)」ではなく「説明・報告する(account)」の動詞から派生した言葉である。事業活動を継続させ発展させてゆくためには、社会からさまざまな形で資金調達しなければならない。そのために、その事業のあり方を関係者全員にわかりやすく示さなければならない。そのための行為のひとつが「決算報告」、つまり「会計」だ。

このブログの読者には繰り返すこともないだろうが、企業システムの開発者も会計を知らなくてはお話にならない。会計を知らないと、ユーザーの意図を背景を含めた形で理解できないし、何よりユーザーに「コンピュータ屋」として見下されてしまうだろう。

ゆえに、ビジネスマンが事業組織において頭角を現すためにも、また、技術者が企業システム開発に関わるためにも、財務や税務の基礎知識が必要だ。

筆者としては、これらに加えて「法律言語」を加えたいところではあるのだが、「経営の4言語」ではなんとなくすわりが悪いので「3言語」でよしとしよう。このブログを読んでいるソフト技術者の多くは、これらのうちの2つ(自然言語、コンピュータ言語)までは確保できているわけだから、抜け目なく「会計言語」を身につけてほしいと思う。

|

« モデルにインスタンスを併記できることの意味 | トップページ | 「実装独立」な設計を用意することの意義 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ビジネスリーダーに必要な「経営の3言語」:

» Re: 設計者の発言: ビジネスリーダーに必要な「経営の3言語」 [atsushifxの七転八倒]
「情報リテラシーとしての経営の3言語」とは、自然言語・コンピュータ言語・会計言語のことだ。これらはビジネスリーダーだけでなく、企業システムの開発者が身につけておくべき基本的素養でもある。 設計者の発言: ビジネスリーダーに必要な「経営の3言語」 う�... [続きを読む]

受信: 2005.07.31 10:05

« モデルにインスタンスを併記できることの意味 | トップページ | 「実装独立」な設計を用意することの意義 »