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2005.05.15

会計システムにオトシマエをつける

◆レファレンスモデル開発のつらさと楽しさ

会計システムのレファレンスモデル「CONCEPTWARE/財務管理」の開発をこつこつと続けている。これは、筆者が公開している無償のモデリングツールXEAD(ジード)で閲覧・編集できるコンテンツライブラリーの最初の作品だ。ずっとそればかりやっていたわけではないが、始めてからもう半年たった。3分の2は完成したが、これほど大変だとわかっていたら始めなかったかもしれない。

とくにつらいのは、やり直しが多い点だ。会心の出来と思われたはずの設計なのに、数週間後にはサブシステム単位で自分でダメ出ししてまたやり直す。事前の失敗の量が多ければ多いほど工学的な品質が高まる――それは頭ではわかっているが、さすがに何度もやり直ししていると自分はバカじゃないかと思えてくる。

これは、コンピュータ利用を前提とした会計システムのレファレンスモデルが、会計学の世界でもシステム開発の業界でも確立されていないためでもある。会計情報システムに関する書籍は今ではわりとあるが、データベース構造やパネルデザインとセットで語られているものは非常に少ない。大量の本を読んだが、自分で考えなければいけない部分が多すぎる。

しかし、つらいことばかりではない。そのようなレファレンスモデルが確立されていないという状況は、それを開発すれば喜ぶ人たちがいっぱいいるということだ。孤独だけれど、「この砂漠をゆく旅人たちのために、オアシスへの道を刻んでいる」という自負を持てる。開発者にはもちろん、会計士や会計学の研究者にも活用してほしい。

◆図法の試金石としての会計システム

また、自分が推奨している図法の実用性をヘビーに検証できた点もうれしい。会計システムは、企業毎に大きな違いがないうえに企業システムとして十分な規模と複雑さをもった標準的な設計課題だ(「CONCEPTWARE/財務管理」の場合、サブシステムが17個、テーブル定義が70個程度になる見込み。大きくはないが、小さすぎもしない)。ゆえに、会計システムの設計図をわかりやすい形で保持できる図法であれば、図法として実用的と判断できる。

言い換えれば、たかだか会計システムをまとまり良く示せないようなら、その図法はとうてい実用的とはいえない。企業システム開発の上流工程で有効であることを謳うモデリング言語体系ならば、会計システムにオトシマエをつけなきゃいけない。半年間、そんな気持ちで開発してきた。

以前にも書いたが、レファレンスモデルがあると、分析手法の有効性の検証にかける時間がずっと少なくてすむという効果がある。図法を示したうえで、それにもとづいた典型的な企業システムのモデルを提示するだけでいい。分析手法の有効性について檄を飛ばす必要も、手法Aの論者と手法Bの論者がいがみあう必要もない。そして、モデルの内容(及びその図法)を気に入った利用者のうちの一部のモノズキだけが、モデラーになるために当該の図法を前提にした分析手法を学べばいい。

図法や分析手法の革新性を語る人物が、読者のもとへやって来るかもしれない。そんなとき、貴重な人生の時間を無駄遣いしたくないのであれば、まずは彼らに尋ねたらいい。なかなか良さそうなんですが、とりあえずその図法で組まれた会計システムあたりのモデルを見せてもらえませんか、と。

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コメント

素晴らしい試みを心から応援します。
私もいつか必ず、オアシスへの道を刻む者になりたいと考えております。

投稿: iwast | 2005.05.15 18:27

 完成を楽しみにしています(^^)

 ところで、前のブログへのコメントですが、ごじゃごじゃしてるのでこの場でひとことだけ。
「リーンソフトウェア開発」というアジャイルの一派の本を読んでます。この本は面白い発想の部分と単なる比喩でしかない下らない部分が混在したものですが、一部渡辺さんの手法に通じる部分もあると思いながら読みました。
 現実に動く小さなシステムをイテレーションで回すかわりに、お客様自身で「業務の構造が理解出来る」モデルを示す方法の方が短いサイクルでイテレーションを回せる事は明らかです。
 あとは渡辺さんの方式に「どうでも良い決定は後回しにする」という事が明確に謳われていたなら、リーンソフトウェア開発に相当近くなります。ご参考まで

投稿: HAT | 2005.05.18 03:16

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