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2005.03.19

失業・転職は「簿記」習得の大チャンス

失業はありがたくないし、安易に転職を勧めるつもりもないのだけれど、失業・転職にともなう求職期間をソフト技術者として最大限生かす方法がある。じつはその時期はいくつかの意味で「簿記」を体系的に学ぶチャンスなのだ。

◆簿記の知識は企業システム開発のイロハ

そもそも、もし読者が簿記を学ぶことに興味を持っていないとしたら、はっきり言って幸先(さいさき)はよくない。具体的に言えば、簿記の習得より「最近話題の実装技術」や「次のプログラミング言語」の習得を優先させているとしたら、ただちに考え方を変えたほうがいい(ミドルウエア開発や組込みソフトやゲームソフトの世界で生き抜くと決めたのであれば問題ないけど)。

それはなぜか。コンピュータを用いた企業システムはもともと、仕訳データを登録して、これにもとづいて財務諸表を発行するために導入され発展したものだからだ。そして、会計システム以外のシステムであってもその多くが会計システムとのインタフェースを持っているからだ。ゆえに、会計システムの基本構造を与える簿記の考え方を理解していないと、企業システムをほんとうに理解することはできない。だから、企業システムの世界でキャリアアップしたいと望むのであれば、簿記はしっかり身につけておいたほうがいい。

◆システム開発を経験すると簿記が面白くなる

それならソフト技術者をめざすのであれば、学生時代に簿記を学んでおけばよさそうなものだが、これは想像するほど効果的ではない。会計士を目指すのでもない限り、ほとんどの学生にとって簿記の勉強というのは砂を噛むような味気ないものだからだ。複式簿記の構造の美しさを感じ取ることもなく漫然と講義を聴いて、単位を取ったとたんに忘れ去ってしまうのが関の山だ。

ところが、実際に企業システム開発の現場で数年も過ごすと、簿記を学ぶことが面白くなる。そのためには必ずしも会計システムそのものの開発を経験する必要はなくて、別の仕事で先輩たちが「借方、貸方」とか「棚卸資産」なんて用語を使って会話しているのを耳にするだけでいい。意味がわからなくても、そういう用語が現実に機能している現場の雰囲気を感じるだけで、簿記を学ぶときに興味をもてるようになるものだ。そして、実際に簿記を学ぶ際には、「じゃあこの商品有高帳をデータベースにしたらはどんな形になるんだろう」なんてことを想像できるし、コンピュータがなかった時代に帳簿の転記がどのようにされていたかもわかって面白い。

要するに、開発実務を経験することで、そのまま学べば味気ない簿記に、自分自身の経験にもとづく興趣を添えられるようになるということだ。しかも、システム屋ならではの視点を学習に持ち込める。開発経験のない学生や一般の学習者にはマネのできない芸当だ。

問題は、開発現場で働いていると簿記を学ぶための時間をなかなかとれない点だ。毎日定時帰宅できるような職場でもない限り、コンスタントに簿記を学ぶのは難しい。だからこそ「失業・転職」がチャンスなのだ。

◆日商簿記2級の内容まで学びたいが

では失業期間にどのように学んだらいいか。筆者がおすすめしたいのは簿記学校の昼間のコースだ。失業期間が長びいてしまうのはつらいが、効果はバツグンだ。とくに日商簿記2級くらいの内容だと、簿記を教えることのプロから学んだほうが独学よりもずっとよく理解できるし、乱れがちな失業期間中の生活リズムを維持できるという意味でも好都合だ。費用が心配なら、雇用促進のための補助金制度もあるし、ハローワークと提携した求職者用の無料コースが開催されていることもあるから利用したらいい。

ただし、資格の取得については慎重に考えたほうがいい。簿記学校のコースはたいてい資格取得を目指しているが、日商簿記ならば2級までを取る必要はないと筆者は考える。3級は試験としては難しくないので受けたらいいと思うが、2級になると科目が「商業簿記」と「工業簿記」とに分かれて量も多く内容も高度になる。これに合格するには、本来の勉強の他に独特な「合格するためのテクニック」を磨く必要があって、いたずらに時間がかかる。そういうことに時間をかけるくらいなら、ソフト技術者としてはそれこそ「最近話題の実装技術」や「次のプログラミング言語」を学ぶほうがよほど実際的だと思う。

そういうわけで、2級と3級を両方学べる昼間コースを選んで、2級の内容も含めてじっくり学んで、とりあえず3級を取得することをおすすめしたい。2級のテキストで学んだ用語の意味はあらかた忘れてしまうだろうが、いつかその用語が仕事の中で出てきたらまた学びなおせばいい。それらは一度は興味をもって学んだことだから、記憶の底に懐かしさといっしょに引き出されるのを待っていてくれるはずだ。

じっさい、会計に強い技術者が貴重な現状を考えると、システム開発の実務経験もあるうえに簿記も理解しているような求職者はけっこう有利に立てるはずだ。企業の面接担当者に「求職期間中に簿記学校で勉強しました」と言うだけで評価が高まるだろう。失業・転職を簿記習得のチャンスととらえて、気分が沈みがちな求職時代を有意義かつほがらかに過ごしたい。

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コメント

ベンダー資格は沢山もっていますが、株に興味があったのがきっかけで、昨年簿記3級をとりました。感想は3級といってもとてもとても、手ごわかったです。
ミドルウェアの開発から離れたので、やっと活用できそうです。
マニュアルみればわかるような、暗記力を試すような資格は、もうやめようと思います。

投稿: 立見 | 2005.03.23 21:07

いえてますね。実務者にとって「調べりゃわかる」ようなことを丸暗記するような勉強ってむなしい。一生は短いので、資格でも何でも、勉強のテーマってのは厳選したいと思いますよね。

投稿: わたなべ | 2005.03.24 13:01

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